橘ヒナタの業務日誌その2 【前回の戦闘後について】 前回の戦闘後、私はフォーチュン所属の艦長である シャトー・ヒルフォードさんの指揮下に置かれることになった。 …指揮下という言葉に、少し嫌な記憶が思い起こされてしまう。 私は軍隊が嫌いだ。 もちろんフォーチュンが軍隊でないことは、私も知っている。 だけど、軍隊的な性質が多分にあるのも確かなのだ。 とはいえ、島を守るためには私一人の力じゃ足りない。 多少嫌なことがあっても我慢しないと…。 【謎の声について】 前回の戦闘前に聞こえた謎の声がまた聞こえた。 内容は奈落の襲来を伝えるものだった。 内容はとても物騒なものだったけど、私はまた彼女の声が聞けてとても嬉しかった。 名前を聞こうとしたけど、ノイズでよく聞こえなかった。 次は彼女の名前が聞けるといいな。 いつまでも“謎の声”呼ばわりは嫌だもの。 【敵の隊長について】 今回の作戦行動中、前回現れた敵の隊長の思念のようなものを感じた。 この感覚には覚えがある。 いままでにも戦闘中に敵の考えがなんとなく分かったり、 攻撃が来る前になんとなく嫌な感じがしたりすることが何度かあった。 ――その話をすると、私の調整をしていた研究所の人たちは 「それこそがスターゲイザーの力だ」と言ってとても興奮していた。 だけど、ここまではっきりと相手の意思が伝わったのは初めてだった。 もしかして私の“力”が強くなっているの?なぜ今になって? 研究所の人たちは、私の“力”がこれ以上強くなることはないって言っていたのに。 あの時感じた敵の隊長(確かシャルレ・J・アルクトゥルスって名前だったはず)の思念は、 私が想像していたものと全く違った。 あの人の思念は、なんと言うか思っていたよりもずっと“綺麗”だったのだ。 私に対する憎悪や悪意といった嫌なものは、ほとんど感じなかった。 あの時そういう嫌なものを出していたのは、むしろ私のほうだった。 どちらにしても、あの人は単なる“邪悪な異星人”ではないのだろう。 【今回の戦闘について】 今回もシャルレ・J・アルクトゥルスの率いる奈落獣と戦闘になった。 今回も島が戦場になって、そして今回も私は町を壊してしまった。 …分かっている。どの道私に選択肢はない。 私が戦わなければ、この島はもっと酷いことになるのだ。 もっと、もっと強くならないと。 【アーディティアについて】 今回の戦闘終了後、私たちはアーディティアの保護下に置かれた。 何でもガリスディア第五帝国に対抗するための戦力を確保するためとか何とか。 彼らは私をどうするつもりだろうか? 私を無理やりガーディアンに乗せ、酷いことをたくさんさせるつもりだろうか? ――あいつらみたいに。 戦う覚悟は決めていたはずだ。 発想が多分に飛躍しているのも分かっている。 それでも…怖い。